映画『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』感想

画像出典:劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像』
名探偵コナンの映画でシリーズ28作目となる劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』を観てきました。公開初日である平日の午前中に見に行きましたが、私を含めて70~80人は座席に座っていたかと思います。
今作は劇場版名探偵コナンでは今まで殆ど出番がなかった長野県警をメインに据えた作品。私は原作を追ってませんし、長野県警の大和や諸伏といったキャラクタに思い入れがないので、見る前は本作を楽しめるかどうか不安でした。
個人的には映画を見る前の予告編で雪崩を見て、過去作の沈黙のクォーターを思い出し(フラッシュバック)ました。以下は、私のネタバレを含んだ映画『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』の感想・レビューです。
『名探偵コナン 隻眼の残像』の感想・レビュー
劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像(せきがんのフラッシュバック)』公開直前PV【4月18日(金)公開】 – YouTube
映画の序盤から詰め込み過ぎでは
コナン映画といえば、映画のアバンがあって、かっこよく映画タイトルが表示され、その後にコナンのメインテーマと共に「俺は高校生探偵・工藤新一」から始まる一連の説明ゼリフが始まる流れが定番となっています。
今作の隻眼の残像でも、その流れは変わっていません。ですが、今作はタイトル表示前のアバンに色々と詰め込み過ぎではないかと感じました。
まず長野県警の大和警部が元強盗で失踪した人間を追跡中に雪山で何かを目撃して銃撃され、雪崩事故に巻き込まれるところから始まります。
この時点で事件と事故の両方が起こっているのですが、その後に国立天文台の研究員が襲撃される事件と鮫谷警部が銃撃される事件が立て続けに発生します。
最終的にこれらの事件は繋がるのですが、アバンに事件3つは入れすぎだと思いました。
また、アバンにはパラボラアンテナの話や天文台の話、サッカーのチケットの話、TVのリモコンの話、毛利小五郎の元同僚である鮫谷警部が突然連絡してきて待ち合わせをして何か相談しようとしていた話まで入ってきます。
コナンが鮫谷警部を銃撃した犯人を追跡して取り逃がすところでアバンはようやく終わるので、いくら何でもアバンに色々と詰め込みすぎだと思いました。
盛りだくさんで内容が濃すぎる本編
今回は映画本編のシナリオも濃いです。司法取引による減刑と贖罪、被害者と残された遺族の思いなどを主軸にしつつ複数の事件が複雑に絡みあう内容となっています。映画を見ている間に息をつく暇が殆どなかったように思います。
登場人物も多く、事件解決のために警視庁の刑事(高木刑事たち)と検察(長谷部)と長野県警(大和たち)と公安(安室たち)と隠れ公安の人たちがそれぞれの立場と目的を持って動いているので結構ややこしく忙しないです。
一応、冒頭のメインテーマの時に作品を楽しむうえで必要な最低限の情報は提示されますが、長野県警の過去と背景、公安警察の過去と背景をあらかじめ知っておかないと、事件を追うだけでは感情と思考が追いつかないでしょう。
今作はコナンは劇場版しか見ないという層や子供、家族連れで見に行くような原作を追っていない層が楽しむのは難易度高めだと私は思います。逆に言えば、事前に予習しておけば今作の骨太なシナリオを楽しめるでしょう。
幸い、今はサブスクが普及している時代。昔はNetflixでコナンの作品は充実していませんでしたが、今ではNetflixで「名探偵コナン TV特別セレクション」で長野県警や公安絡みの話をまとめて見ることが出来るようになっています。
本作を見て人物関係や各人物の過去をより理解したくなった人は、見放題のサブスク等でコナンを履修して、もう一度映画を見るのもありです。そうすれば各キャラクタの各シーンの感情をより理解できるはずです。
まぁ、そこまでしなくても事件や人物の背景がよく分からなくても主要キャラクター達の見せ場はあるので、内容を全部理解できなくても最悪キャラクターものの映画として楽しめる作りにはなっていました。
事件を捜査し銃を使って2度起きたまま活躍する毛利小五郎。銃を持った犯人に果敢に立ち向かう毛利蘭。ファインプレーで犯人を追い詰める光彦と元太。何だかフィクサーっぽい立ち位置を取り続ける安室透などが見れます。
キャラクターのかっこいい活躍だけでなく、やたらと中国の諺や故事に詳しい蘭姉ちゃんや都合よく使われ心労で倒れそうな風見刑事、犯人に対してレーザーを浴びせるコナン君など、心に残るちょっとしたシーンも多かったです。
私個人がコナン映画に求めているものは"奇想天外なトリック"や"犯人との心理戦"、"犯人と一対一の展開"だったりするので、今回はあまり自分好みの映画ではありませんでしたが、作品としての質は全体的に高かったように思います。
話は面白いが細部の描写や構成に違和感がある
今作はコナン映画でよく見られるキャラクターや舞台が生み出す「お祭り感」主体の作品ではなく、大人向けの刑事ドラマやミステリといった人間ドラマが主体の作品となっています。
今作では作中で様々なドラマが描かれますが、主に「司法取引制度を巡る葛藤」が中心となってドラマが生まれています。しかし、私はこれに感情移入出来ませんでした。それは人物描写に違和感があったからです。
例えば「強盗を起こしたり、司法取引で仲間を売るような人間が、後になって自殺した被害者に対して罪悪感を持つのか?」という部分が引っかかって、正直言って人間ドラマの部分は心が動かされることはありませんでした。
他にも「執行猶予後に姿をくらました元強盗に復讐してやると息巻いてる被害者の遺族」を見て、何年も警察に文句を言ってる暇があったら探偵とか雇ったほうが早いのでは? と思ったりもしました。
作中の被害者の遺族や犯人、警察の行動や人物描写として違和感がある部分が複数ありました。そういった細かいところが気になって、映画で描かれるテーマの深さとのバランスが取れなくていまいち楽しめませんでした。
また、「大切な人を失った時、貴方はどう行動するのか?」といった問いかけも本作に含まれており、このテーマを描く上で「死んだと思っていた想い人の敢ちゃんが生きてました」という長野県警の上原由衣が邪魔になってきます。
このようなテーマを深く描きたいなら、長野県警を登場させず、お互いに大切な人を失った犯人と毛利小五郎の対立関係を中心にして物語を構築したほうがよかったのではないかと見終わった後に感じました。
コナンファンや長野県警ファンは楽しめる映画
以上が、ネタバレを含んだ映画『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』の感想・レビューです。コナンファンや長野県警ファンは楽しめるでしょうが、大衆向けの気軽に見れるエンタメ作かと言われると違うと思います。
私個人が本作を100点満点で評価すると60点です。決して面白くない作品ではありませんし、本作を星5つ評価する人がいてもおかしくないとは思いますが、原作ファン以外に本作を勧めるのは少し難しいところがあると感じます。
映画の最後の予告で、最初にバイク音がした時は服部平次かな?と思い、次に白い羽が見えた時はキッドか?と思いましたが、どうやら次作は神奈川県警がメインの話になりそう。神奈川県警組を今から予習したほうが良さそうです。