今観てこそ楽しめる! 映画『帰ってきたヒトラー』感想・レビュー
今、大ヒット上映中の激ヤバ映画『帰ってきたヒトラー』を先日見てきました。
映画館は平日の昼間の飯時なのに、かなり混んでました。皆さん、ヒトラー好きですねぇ(笑)。かつての同盟国ですからねぇ。今度はイタリア抜きでやりましょうね。
以下、ネタバレありの映画『帰ってきたヒトラー』感想とレビューです。
映画『帰ってきたヒトラー』感想・レビュー
ヒトラーが本物にしか見えない
映画に登場するアドルフ・ヒトラーは、過去から現代にタイムスリップしたという設定です。
見た目も動きも考え方も第2次大戦中のヒトラーそのままで、本物のアドルフ・ヒトラーにしか見えませんでした。
そっくりな役者さんがヒトラーを演じているのは分かるんですが、本物がヒトラーを演じているようにしか見えません。
なので、作中で「本物そっくりだ!」とドイツの人気者になり、移民問題や経済問題を大衆に語り、政治的なカリスマになっていく展開はとてもスリリングでした。
ヒトラーを怪物にするのは国民
この映画の作中で現代にタイムスリップしたヒトラーは周囲の勘違いもあってコメディアンになります。
本人にそのつもりはなくても「ヒトラーを演じるコメディアン」(ものまね芸人)として認識されています。しかし、その一方で「彼の言うことも一理ある」と徐々に支持を集めていくことになります。
この流れが、史実のアドルフ・ヒトラーそのもので、背筋が凍りました。
ナチス・ドイツのヒトラーも最初は笑われていました。不況になり、人民が困窮しだすと急速に支持を集めました。
映画の中では当時と違い、テレビやインターネットがあるので史実のアドルフ・ヒトラー以上の速度で彼は注目を集めていくことになります。
そんな中でドイツ国民が困っているのを”支持を集めるいい状況”だと捉えているヒトラーが恐ろしかったです。
優秀な多重メタフィクション映画
この映画はヒトラーを題材にしたブラック・コメディ映画・社会風刺映画と認識されています。
しかし、この映画はメタフィクション映画としてもかなり優秀です。
まず、この映画の土台が「第2次大戦でヒトラーが死んだ」という史実を下敷きにしたフィクションです。
そのフィクション(映画)の中で、さらにフィクションが作られていくという多重構造になっています。
多重メタフィクション
- 帰ってきたヒトラーというフィクション
- 映画の中でヒトラーが蘇った自分についての小説を書く
- 小説を元にヒトラーが「帰ってきたヒトラー」という映画を制作
- 映画の中でヒトラーを演じるヒトラーを殺すという展開
- 殺そうとした話自体が作り話で妄想(または映画の脚本)
フィクションの階層が映画が進むにつれて、より深く複雑になります。
これは「映画の話」なのか「映画の中で作っている映画」の話なのか、「映画の中で作っている映画を止めようとしている映画」の話なのかと考えていくと、この映画に仕掛られた多重メタフィクションの面白さがより分かると思います。
『帰ってきたヒトラー』はメタフィクション好きにはたまらないメタメタ映画となっていました。
メタだけでなくパロディも
ブラック・コメディとしてもメタフィクションとしても優秀な映画ですが、『帰ってきたヒトラー』はパロディ映画としても楽しめます。
具体的には、別のヒトラー映画の名シーンが作中で再現されています。
こちらのヒトラー映画『ヒトラー ~最期の12日間~ 』の名シーンが再現されています。
再現度は元ネタを知っていればすぐに気付けるほどの再現度でした!
まだ、『帰ってきたヒトラー』を見ていないという人は、あらかじめ『ヒトラー ~最期の12日間~ 』という映画を先に観ておくと、より楽しめると思います。
Amazonのプライム会員であれば、現在『ヒトラー ~最期の12日間~ 』をプライムビデオで無料で見れます。
既に見ている人も、予習で「最期の12日間」を観ておくと良いでしょう。
今観てこそ最高に面白い「ヒトラー」映画
現実世界ではイギリスのEU離脱が濃厚になり、ドイツなどのEU各国が移民問題で頭を抱える中、日本は参議院選挙、アメリカでは大統領選が始まろうとしています。
それを踏まえた上で、この『帰ってきたヒトラー』という映画を見ると、映画の中で起こる出来事がとても他人事とは思えません。
ヒトラーは選挙で選ばれた、国民が望んだ独裁者です。ヒトラーという怪物を作り上げたのは国民一人ひとりの意志です。
痛烈な社会風刺映画である『帰ってきたヒトラー』を最も楽しく、最も痛快で、最も旬な状態で見るのは今しかありません。レンタルなどで見る頃には映画で取り扱うネタが旬を過ぎています。
興味はあるけど、まだ見ていないという方は『帰ってきたヒトラー』を劇場でやっているうちに見ておく事をおすすめしたいです。