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“旅に出たくなる小説” 筒井康隆「旅のラゴス」:書評・ブックレビュー

旅のラゴス (新潮文庫)

今日は、最近読み終わった小説を紹介しちゃいます! それは「旅のラゴス」です。

「旅のラゴス」自体は1週間以上前に読み終わっていたのですが、パソコンが壊れていたため感想の記事を書くことができませんでした。

しかし、この小説の感想を書くにいたって、思ってもみない事が起こりました。今回、パソコンが壊れたことによって、この小説の感想も大きく変わることになったのです。

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旅のラゴス

大まかなストーリー

北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か?異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。
―― 旅のラゴス (新潮文庫)より

以下ネタバレ

この小説の感想を簡単に一言で表すことは難しいのですが、「読んでみたあとで旅に出たくなる」そんな小説でした。

主人公ラゴスは目的を持って各地を旅をしているようですが、最終的には「旅」そのものが目的であることが最後まで読むことで分かります。希望にも絶望にも見える作品の終わらせ方は私の好みでした。

主人公は旅の途中で2度も奴隷になるのですが、絶望することはなく、奴隷の状態であることも道中であるかのように考えているようでした。

作中で出てくる超能力を持った人間も、その世界ではごく自然に世界に存在しうるように感じられるように描写されており、SF&ファンタジーの作品でありながら登場人物に現実味がありました。

この作品は全体を通した、世界観やストーリーを楽しむといった形の小説ではなく、あくまでも主人公の旅の空気感を味わう小説のように感じました。読んだあとで今までに感じたことのない不思議な感覚を味わいました。

ここからは、私のパソコンが壊れたことが影響しての感想になります。

作品中で、先祖が持っていた技術や文化は高度すぎて、機械がなければそれらをなすことができず、機械が壊れたことで「高度な文明」が一気に「原始に逆戻り」したという話が出てきます。

私のパソコンが壊れた時に、その話を思い出しました。現代人はパソコンなどでいろいろなことが出来るようにはなっているけど、逆に言えばそういったものがなければ何もできない人という人も増えていそう。

世の中便利にはなったけど、人間自体の能力が上がったわけじゃないんですよね。今の生活は高度な技術に支えられてるだけ。

東日本大震災の時も様々なインフラが止まることで、システムが機能しない時にどれだけの影響が出るかということがある程度分かりましたし、最近障害のあったファーストサーバの件では持っていたデータを失うことでどれだけ社会にマイナスの影響が出るかということも分かりました。

今はネットワーク環境前提のサービスやデータを一元管理するAppleのiCloudのようなサービスが広まりつつあるような段階ですが、そういったものを見て「旅のラゴス」で起こったことは今後の現実の社会でも起こりうるんだろうなと感じています。

20年以上も前の小説ですが、インフラが完全停止した世界を現代社会に当てはめてみると面白いですね。

旅のラゴス (新潮文庫)
旅のラゴス (新潮文庫)