見た人の大半が意味分からんけど面白いと思う映画「TENET」レビュー

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クリストファー・ノーラン監督の最新作である映画「TENET テネット」を上映初日に見てきました。人気監督の作品ということもあって、上映初日にはコロナ禍にも関わらず多くの人が劇場に訪れており映画館は賑わっていました。

上映時間が2時間30分という長丁場の作品であるにも関わらず、見終わった後にはその長さを全く感じさせない濃厚な時間を体験することが出来ました。世界各国で初登場一位になるのも頷けるSFスパイ映画の傑作でした。

映画を見終わった後は映像とストーリーに圧倒されて半ば放心状態でした。映画鑑賞から2日以上経って気持ちも落ち着いてきたので、ネタバレも含んだ映画「TENET」(テネット)感想・レビューを以下に記述します。

映画「TENET」(テネット)感想・レビュー

映画『TENET テネット』スペシャル予告 2020年9月18日(金)公開 – YouTube

唯一無二すぎるSF設定映画

この映画は世間でストーリーが難解だと言われています。その理由の1つがこの映画で登場する『時間の逆行』というSF設定です。この設定が「TENET」を唯一無二の映像体験映画にしています。

タイムトラベルを描いた映画は多数ありますが、『時間の逆行』を描いた映画は私の知る限り本作が初めてです。過去に似た設定の映画が存在しないため他の作品に例えることが出来ないことは本作の話の理解を難しくしています。

具体的に言うと、あらかじめ「TENET」鑑賞のために似た作品を見て予習することや「○○みたいな映画」と聞いて内容を予想することが出来ません。映画を見た後でこれほど人に内容を伝えにくい映画もなかなかないでしょう。

さらに言えば、これまでのタイムトラベル作品と異なり、時間を「順行」する人間と「逆行」する人間が同時に出てくるのも混乱の要因となっています。この同時進行によって頭がパンクしそうになる人はかなりいると思います。

すべての鍵を握る「回転ドア」が出てくるのが中盤

私は「時間の逆行」という設定自体は割と簡単に受け入れることは出来ました。しかし「時間の逆行をどうやって実現しているのか」の説明が中々出てこず、分からないままストーリーが中盤まで進むので非常に消耗しました。

主人公が初めて「回転ドア」というキーアイテムを使うようになって作中の多くの謎がようやく氷解したので、そこまでは分からないところがあっても画面を食い入るように見るしかなく映画の中盤まではひたすら我慢の時間でした。

回転ドアによるエントロピーの逆転、順行と逆行の切り替え、これまでのSF映画にはなかった画期的な設定です。絵にもなる素晴らしい設定だと思いますが、それが出てくるまで大半の観客の集中力は正直持たないと思います。

いわば映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で中盤までデロリアンが出てこず、どうやってタイムトラベルを実現しているのか分からないまま話が進んでいくようなものです。観客の頭が混乱しても仕方ないと感じます。

ストーリーは難解だが分からなくても面白い

この映画、見終わった人間の8割は「ストーリがよく分からなかった」という感想になると思います。TENETのすごいところはストーリーが把握できていなかったとしてもSFスパイ映画として十分面白いということです。

順行人間と逆行人間の格闘アクションシーン、逆行カーチェイス、順行と逆行の入り混じった挟撃作戦。どのシーンも迫力があり、なおかつ新鮮で見応えがある映像で、映画館に通って繰り返し見たくなるような魅力がありました。

時間軸と場所が同じ場面でも順行なのか逆行なのかによってシーンの印象が大きく変わってくるので、映画を見終わった後に印象的なシーンが頭に残り続ける作品でした。

ストーリーが分からない人はパンフレットを買おう

私は映画を見終わった後にストーリーに分からない部分がいくつか残っていました。それらの多くの疑問点は映画館で売っていたTENETのパンフレットを買って読むことで解消することが出来ました。

「TENET」のパンフレットには作品の解説や監督や役者へのインタビューなどが掲載されています。時間の逆行や回転ドア、作中の時間軸などの解説が掲載されていますので話がよく分からなかったという人におすすめです。

「TENET」のパンフレットは映画館で900円で売っていました。もしTENETの世界をより深く楽しむためにパンフレットが欲しいと思う方は、劇場の在庫には限りがありますので、早めに手に入れておいた方が良いでしょう。

終盤は盛り上がりに欠けるがエモい

本作の大筋は「セイターという悪役が末期がんでヤケクソになって未来人の発明品を使い人類を巻き込んで自殺しようとするのでTENETという組織がそれを阻止する」という話ですが、終盤の盛り上がりに欠けている気がします。

主人公(名もなき男)とセイターは終盤に直接対決しませんし、セイターの死に様も「イキって勝利宣言した後に無防備なところを妻に呆気なく殺される」という情けない最期を遂げています。もうちょっと何とかしてほしかった。

セイターの妻のキャットもよく分からない人間で、夫と心を通わせられていないのにセイターが最後に幸せを感じていた日をなんで知っているのか理解できない。セイターと妻の描かれ方については改善の余地があるように思えます。

悪役との決着は微妙な感じですが、主人公の相棒であるニールが作品の味わいを二重にも三重にもしてくれます。終盤になって映画の序盤で主人公の命を救ったのはニールだと分かりますし、終盤は2回も主人公を助けています。

ニールの主人公に対する献身はニールと主人公との間にあるはずの映画では描かれなかった長年の付き合いを想像させます。主人公はこれからニールの事を知っていくんだろうなと考えるとエモいです。

疑問点がいくつかあっても楽しめるエンタメ作品

以上が、私の映画「TENET」の感想です。序盤で主人公が撃った逆行弾の火薬ってどこから出てきたの? とか、主人公が乗った逆行車って誰が用意したの? とか幾つか疑問がありますが、疑問があっても楽しめる作品でした。

パンフレットによるとノーラン監督は子供の頃に映画館でスパイ映画を見て感じたワクワク感のようなものを大事にしているようで、その時の感覚を観客に提供することを信条としているようです。今作で実現できていると思います。

最近のスパイ映画は昔のスパイ映画のプロットの焼き直しのような新鮮味に欠ける作品が多かったので「TENET」が起こした新たな風によって、これまでになかったような作品がこれからも生まれてくることに期待したいです。

メイキング・オブ・TENET テネット クリストファー・ノーランの制作現場

メイキング・オブ・TENET テネット クリストファー・ノーランの制作現場